刑事事件の場合、同じ意味でも一般的に通用している言葉と、
法律の世界で使われる言葉が違う場合があり、
また、同じ言葉なのに一般的に通用している意味と法律の世界での意味が違う場合があります。

前者の場合なら、
警察に逮捕された人を、
一般的には「容疑者」といい、法律の世界では「被疑者」と言うのが好例です。
後者なら例えば「確信犯」という言葉は、
一般的には狙ってやったというニュアンスで使われますが、
法律の世界では一定の信念に基づいて、
自己の行為が無罪であると信じてした犯罪となる行為を言います。

「別件逮捕」という言葉は後者に当ります。
法律の世界で別件逮捕をしたら違法になります。
ちなみに法律の世界で言う「別件逮捕」とは、
B罪の逮捕要件が備わっていないにもかかわらず、
B罪を取り調べる目的で軽微なA罪で逮捕することを言います。
一般的に考えられている「別件逮捕」とは法律の世界で言う
「余罪取調べ」に当ります。
余罪取調べと(法律の世界で言う)別件逮捕は正直なところ、
微妙なところがあります。
実務上でも、あからさまに別件逮捕という場合を除いては、
理論的には別件逮捕と見えても余罪取調べだと考えてしまうので。

ちなみに、中也さんの日記にあった別件補導ですが、
これはまずありえません。
補導は逮捕と異なり、違法行為に対する身体拘束ではなく、
虞犯(違法ではないが、問題のある行為)に当る場合、
または犯罪に巻き込まれる恐れがある場合に、
一般的予防の見地から身体を一時的に拘束するものです。
したがって逮捕とは目的が異なるので、
逮捕のために補導をすることはないし、
補導のための補導もないということになります。

法律用語は一般的な用法になじんでいると
違和感がしばらく拭い去れませんね。

コメント